kotetzmusumetofafataroのブログ

こつてつむすめとファーファ太郎による映画評論対決

Dream Theater『Systematic chaos』byヘリオン

ハイテクニックを惜しげも無く披露するロードランナー移籍1作目の9thアルバム

プログレメタルの代名詞ドリームシアターのスタジオアルバム9作目(2007年)。

1.In the presence of enemies pt.1
2.Forsaken
3.Constant motion
4.The dark eternal night
5.Repentance
6.Prophets of war
7.The ministry of lost souls
8.In the presence of enemies pt.2

曲芸的とも言える超絶技巧なテクニックに対して、2ndアルバム『Images & Words(1992年)』やその続編とも言える5th『Metropolis Pt.2:Scenes From A Memory(1999年) 』など一部を除いて歌メロが希薄な当バンドだが、その中でも極めてメロディ性が薄いと言える1作。

アルバムの目玉である2分割の「In the presence of enemies」以外は、リードトラック扱いの「Forsaken」「Constant motion」含め、2007年と言う時代から微妙に遅れた感のあるヘヴィ&グルーヴィなノリに支配され、退屈かつ印象に残らないヴォーカルラインの曲が続く。

しかし歌メロが弱い分、ジョン・ペトルーシのギターは全編通して印象的なフレーズが多く、メロディ不足を補って有り余る出来。

何よりも今作は中途半端なメロディに対して開き直ったように複雑な超絶テクが満載である。
耳が追いつかない程の膨大な音数をハイスピードで重ねるジョーダン・ルーデスの鍵盤とジョン・ペトルーシのギター、不必要な程に高速のユニゾンをキめまくるマイク・ポートノイのドラムとジョン・マイアングのベース。
「こんなのプログレじゃなくて単なるテクのひけらかしだ」なんて言われがちな彼らだが、完全に開き直っている。ここまで見せつけられると清々しさまで感じる上に、実際凄いので中途半端に良い曲をやられるより素直に楽しめる。

何より白眉なのはタイトルトラックと言える「In the presence of enemiese」。
「Pt.1」と「Pt.2」がそれぞれ9:00/16:38という彼らお得意の長尺曲。しかしその曲構成はさすが巧みであり、テクニックとメロディが高次元で融合している為まったくダレることなく没入させられる。
基本的に小曲の多い今作だが、本来ひとつの当曲をアルバムの最初と最後に2分割することによって、あたかもコンセプトアルバムであるかのような錯覚(あくまで錯覚である)を覚えさせ、アルバムを聴き終えた時には非常な満足感を感じる。
同じく大曲である「Shine on you crazy diamond」をアルバムの前後に分割配置したピンクフロイドの名作『Wish you were here(1975年)』と同じ構図である。

ちなみにアートワークは高速道路とか空薬莢の山とか髑髏とかの至る所を蟻さん達が歩いてるようなヤツ。
歌詞の世界観はざっくり言うと「色々人生迷ってるけど、最後はやっぱり信仰だよ、アーメン」みたいな感じ(歌詞に興味ない筆者)。

どうやらそのメロディの薄さ故にファンからは人気の無いアルバムらしいが(他も大差ないとおもうけど)、個人的にはドリームシアターの作品中最も良く聴くアルバムである。(もちろん、『I&W』と『Metropolis pt.2』は別格である。)

世間の評価に惑わされず是非一聴を。